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32話 ミリア死守の命令と、ユウヤの単独行動

Penulis: みみっく
last update Tanggal publikasi: 2025-10-17 06:00:50

「いや……勝つ負けるじゃないでしょ? ミリアを護れるかだよ? 勝てるっていうのは分かるけど、ミリアを護れなければ護衛の意味がないし。盗賊の討伐なら冒険者に頼めばいいだけだし」

 俺は冷静に護衛の本質を説いた。彼らの顔色が変わるのが分かった。彼らの瞳に、責任の重みが宿る。顔つきが真剣になり、背筋がピンと伸びた。

「そ、そうでした……」

 護衛はハッとしたように、顔を青ざめさせた。その表情には、自分の役割への再認識と、緊張の色が浮かんでいた。彼らの間で、静かな覚悟が共有される。

「相手は護衛が五人、盗賊が二十人ほどだったから、戦って勝つのは簡単だけど、ミリアを狙われていたら数が多くて……結構、厄介だと思うよ。まあ……あのバカ貴族は多分、国王の前で恥をかかされたと思って俺に仕返しに来ただけだと思うけど」

 俺は状況を分析し、具体的に説明した。彼らの表情が、さらに引き締まるのが見える。視線は、周囲の警戒すべき場所へと向けられていた。

「なるほど……。そうですか……ではユウヤ様、どういたしますか?」

 護衛の一人が、真剣な面持ちで俺に指示を求めた。

 ん? 護衛が俺に指示を求めているのか? ど素人の俺に? 昨日の稽古という名の遊び、あるいは暇つぶしで、俺が彼らを圧倒してしまったからだろうか。ホントなら、ミリアを馬車に乗せてバリアを張って安全にしておきたいところだが、残念ながら馬車がない。バリアを何も無い場所で使用すれば、その存在が露骨にバレてしまうだろう。

「狙いは多分、俺だけだと思うから三方向に分かれる。まずは俺一人、王国の兵士に知らせるやつが二人、残りの全員はミリアを死守してもらう。もし攻撃を受けた場合は、誰か俺に知らせてくれ」

 俺は即座に指示を出した。簡潔だが、必要な要素は全て盛り込んだつもりだ。護衛たちは一様に頷き、緊張感を持って配置につこうとする。

「反対ですわ。なぜ、ユウヤ様がお一人なのですか!」

 ミリアは不安そうな青く透き通った瞳で俺を見上げた。その声には、俺を心配する気持ちがにじみ出ている。その顔は、今にも泣き出しそうだ。俺の腕に絡ませた手を、一層強く握りしめた。

「うぅ~ん……大勢いると戦闘の邪魔だし、護りきれないからかな……」

「一人の方が動きやすいから……」

 俺は苦笑いを浮かべながら、曖昧に答えた。本当は、俺一人の方が動きやすいし、いざとなれば空間魔法でどうとでもなるからな。

「ミリア様……ユウヤ様の指示に従いましょう」

 護衛長らしき男が、恭しくミリアを諭す。その声には、ユウヤの判断が最善であるという信頼が込められているようだ。彼の表情からは、プロとしての冷静さがうかがえる。

「分かりましたわ……ううぅ……お気を付けてください」

 ミリアは名残惜しそうに、そして心底心配そうな表情で俺に視線を送り、護衛たちと共に別の方向へ進んでいった。その青く透き通った瞳は、最後まで俺の姿を捉えようとしており、別れがたい気持ちがにじみ出ていた。その背中が小さくなるのを見届け、俺は貴族とその手下の盗賊たちの方へ向き直った。

♢子犬以下の敵と出発

「じゃあ、あいつらが犬のモンスターより強く見える?」

 俺はミリアの青く透き通った瞳を覗き込み、問いかけた。その瞳の奥に、不安の色が揺れているのが見て取れた。

「あ、見えませんわ……ただの子犬以下ですわね……」

 ミリアは小さく首を振り、少しだけ安堵したような表情を浮かべた。その口元には、微かな笑みが浮かんでいる。安心したような吐息が、そっと漏れた。

「だよね……だから安心して少しだけ待っててね」

 俺はミリアの頭をそっと撫でた。柔らかな髪の感触が指先に伝わる。彼女の髪は、まるで絹糸のように滑らかだった。

「はぁ~い」

 ミリアは素直に頷き、俺の言葉を信じるように、瞳を潤ませながら見上げてきた。その瞳には、俺への絶対的な信頼が宿っている。

「じゃあ兵士に連絡と、ミリアの死守を頼んだよ」

 俺は護衛たちに力強く告げた。彼らの視線が、一斉に俺に集中する。

「はい!」

 護衛たちは一斉に返事をした。彼らの表情には、緊張と決意が入り混じっていた。この先に大勢の殺気というか闘気を感じるな……。思った通り、奴らは待ち構えていた。空気の重みが、それを物語っている。

♢愚かな貴族との対峙

 路地の向こうから、いかにも悪党といった風貌の男たちが現れた。その中央には、先ほどの太った貴族がふんぞり返っている。その顔には、醜いほどの怒りと憎しみが浮かんでいた。

「おい!貴様……国王様の前で恥をかかせやがって……」

 やはり俺への逆恨みか。自分で恥をかくような言動をしておいて、俺のせいにするとは、まるで駄々をこねるガキと同じ思考回路だ。きっと、全て他人が悪くて自分は悪くない、とでも考えているのだろう。こんなのが領主になったら、その領民はたまらないだろうな。虫唾が走るような感覚だ。

「えっと……自分からじゃなかった?俺は何もしてないけど?」

 俺は眉をひそめ、冷静に問い返した。その言葉は、まるで氷のように冷たい。

「ウルサイ!ウルサイッ!お前が恥をかかせたんだろ!こいつを殺せ!」

 貴族は顔を真っ赤にして、癇癪を起こした子供のように喚いた。その声は、甲高く耳障りだ。やっぱり思った通りに俺のせいになっている。貴族が雇った盗賊たちが、一斉に抜剣した。刃が鞘から抜き放たれる乾いた音が、静まり返った路地に響き渡る。金属と金属が擦れる音が、嫌に脳裏にこびりつく。

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